悟り

先日、ある営業マンがお店へやってきました。


商品はITサービス。



バーコードみたいなモノをお店に置く。



初来店したお客さんに、ケータイをそのバーコードに近づけてもらう。



ピロリン 登録完了




この手順でお客さんのデータベースを集め、こちらからメールでお客さんに情報発信できるという代物です。



マーケティングの世界では3日、3週間、3ヶ月が鍵を握っていると言われているそうな。




来店から3日目でお礼状をだすと、またすぐ来店してくれる可能が高い。

 

そして紹介客が得られやすい。



3週間来店が空くと、人は記憶が薄れるので、このタイミングで手紙をだしてお店の存在を思い出してもらう。


3ヶ月以上来店があくと、ほとんどのお客さんがお店に来なくなってしまうので、割引券を送る。





この方法で顧客の流出を防げば、固定客が増えて売上が上がる。


とされています。




営業マンの持ってきたシステムを使えば、3日間・3週間・3ヶ月間来店の間隔があいてる人に自動的にメールがいくというスグレモノ。


誕生日にも自動的にお祝いと割引のメールが届いたり。


お客さんのフェイスブックにお店の情報を流して、お友達を紹介してもらったり。


もうなんだか今のITは凄いんです。



でも私は乗り気ではありませんでした。



遠い都会からわざわざ高知まで来て、一生懸命説明をしてくれた営業マン。



その営業マンに失礼がないよう、私も一生懸命お断りする理由を説明しました。



『私は作為的にお客さんの心理を誘導したくない。』

 

『自分の売上のために来店を促すようにしていると、自分の言葉に説得力がなくなる。』



『お客さんを囲いこむよりも、早く治してまた次のお客さんに来てもらう方が良い。』



『メンテナンスは大事だけど、お客さんと依存関係は作らない方がいい。』



『整体の目的は、整体へ来なくても良い身体を作ること。』



『マーケティングではなく腕で勝負したい。』



なんだか営業マンに説明をしているうちに、頭が整理されてきて、自分の理想とする経営論がみえてきました。



モヤモヤとしていたものがクッキリ見えてきた感じ。


自分でも気付いてなかった理想の経営論を語っていました。





手塚修虫の『ブッダ』で大好きなシーンがあります。


ブッダが木のほとりで瞑想をしていると、ヤタラという巨人に相談を受けます。

 

そのヤタラに、人はなぜ生きるのかを語りかけます。



『木や草や山や川がそこにあるように、人間もこの自然の中にあるからには、ちゃんと意味があって生きているのだ。

 

あらゆるものとつながりをもって・・・。

 

そのつながりのなかで、おまえは大事な役割をしているのだよ。』



ヤタラが去った後。



ブッダは彼に語ったことが、自分自身の悟りであったことに気づきます。



こんな感じ。




私も営業マンに説明しながら、自らの理想の経営哲学を悟りました。


だから私はもうブレません。



開業した頃は、お客さんが少なかったのでいろんな事を試しました。



お礼状をだしたり、割引券を送ったり。


先ほどの3の法則を駆使して。


でも違和感を感じてすぐ辞めてしまいました。



やっぱり、作為的な部分があったからでしょう。


作為的なものが見え隠れすると、お客さんとの信頼関係が崩れます。



そんなことをしなくても、自分さえしっかりした治療をしていれば、お客さんは逃げません。



腕が良い。


だからお客さんが来る。



この超シンプルな経営方針が、最善であり最強です。