娘のおしゃぶりが、ちぎれかかっている。
多分、娘が歯で噛んだせいだ。
このままおしゃぶりをくわえさせると非常に危険。
ちぎれてしまって、呑み込んでしまうかもしれないから。
娘はおしゃぶりが大好き。
家にいるときは、ほとんどおしゃぶりしている。
おしゃぶりがないと夜寝てはくれない。
まるで宝物のように大事にしている。
このおしゃぶり、もう1年近く使っただろうか。
1歳を超えたあたりで、本当はおしゃぶりを卒業させたかった。
いま娘は1歳半。
隠しても、
『おしゃぶりが欲しい』
と泣き出せば、ついつい渡してしまう。
そろそろおしゃぶり離れしてほしい。
そこで、娘に引導を渡すことにした。
嫁が娘の前で、おしゃぶりをちぎって見せたのだ。
嫁『ほらおしゃぶり、もう使えんよ。分かった?』
嫁『おしゃぶり沢山使ったよね?ありがとうは言った?』
嫁が優しく説くように語る。
娘はおしゃぶりをじっと見ている。
嫁『おしゃぶりにバイバイは?』
娘は眼からポロポロ涙を流しながら、不思議そうに
おしゃぶりを見ている。
叱ったときに、ビェェーンって泣いたり
抱っこして~って、ワンワン泣いたり
するのとは明らかに違う泣き方。
使えなくなったおしゃぶりは、娘にとって大切な友達
だった。
いつも一緒だった友達。
それをお別れさせた。
おしゃぶりが使えなくなったのを、娘が理解したのか
どうかは分からない。
泣きわめくわけでもなく
ポロポロ涙を流して
根っこだけになったおしゃぶりを、必死でくわえようとする娘。
私と嫁は切ない気持ちで、泣きそうになった。
私が小学校のとき、飼っていたセキセイインコが猫に襲われ死んでしまった。
姉と二人でいつまでも泣いた。
それを見ていた両親は、今の私と同じ心境だったろうか。
哀しそうに泣く娘。
出来れば代わってあげたい。
許されるなら、せめて、前に使っていたおしゃぶりを、
すぐにでも渡してあげたい。
でもそうはいかない。
娘にガマンを強いるのだから、私もガマンせねば。
こうやって子供だけでなく
親も同じように成長していくんだ。
と解かった出来事だった。
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