子慣れてしまう恐ろしさ

  以前、エレファントカシマシに密着するドキュメンタリー番組を見た。

 

ド素人の私からすれば、荒削りで、和気あいあいとやっているイメージのバンド。

 

 

でも密着取材でみる彼らは違った。


レコーディングのとき。


『音が合ってないっ!』


『ちゃんと練習してきたのかっ!』


とボーカルの宮本氏がメンバーに檄をとばす。


 

ライブ前のリハーサルも同じ。


同じところを納得いくまで合わせる。


かなりピリピリしている。

メンバーに笑顔はない。

 

 

 

音楽番組でみる彼等からは、想像できないストイックさがあった。


これがプロの仕事だと思った。


『自分たちが楽しむ。』


と言えば聞こえは良い。

 

 

 

それよりも


『客を楽しませる』


これがプロの仕事だと彼等は知っていた。







ある日、東京から来たバンドマンが、私のお店にやってきた。


今夜、高知でライブがあるのだという。


聞いたことがあるような、ないようなバンド。


私はバンドに詳しくない。


失礼だが、その人のバンド名は忘れてしまった。

 

 

 

バンドマンは私と同い年。


昨日、岡山でライブをしていたら首が痛くなったそーだ。


今日、高知入りした時に、誰かにうちの店を聞いてやってきた。


話を聞くと、もう3時間後にはライブだという。


『じゃあ治療が終わったら、すぐ音合わせとかリハーサルなんですか?』

『時間は大丈夫?』


と聞くと


『いやぁ。うちのバンドは高校から一緒なんで、リハなしで出来ちゃうんですよ。』


『もう15年ですから。いつもぶっつけ本番です。』


彼には3時間後にライブだという緊張感はなかった。

 

 

 

小慣れてしまう恐ろしさを、私は目の当たりにした。

 

 

 



場数を踏めば、それなりに出来てしまう。


だから汗をかくのを忘れてしまう。

 

 

そこからは惰性になり、ゆるやかに退化していく。


それなりにライブが盛り上がっても、エレファントカシマシのような、こみあげる熱さは感じないだろう。



もし下手でも、苦しみ、もがいて作り上げたライブを私は観に行きたい。

 





 

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