最近読んだ本で、面白いエピソードがあったのでご紹介します。
今から数十年前。
ある経営者が、経営セミナーに参加しました。
セミナーは温泉旅館を借りて二泊三日で行われるもので、大変高額だったようです。
しかし、講師のなかに本田宗一朗さん(HONDAの創業者)の名前があったので、その方はなんとか参加しました。
当日、参加者は温泉に入って浴衣に着替え、大広間に座って、本田宗一朗が来るのを待ちました。
しばらくすると本田宗一朗が姿を現したが、浜松の工場から直行してきたような油のしみた作業着。
そして開口一番、こう一喝した。
『みなさんは、いったいここへ何しにきたのか。
経営の勉強をしにきたらしいが、そんなことをする暇があるなら、一刻も早く帰って仕事をしなさい。
温泉に入って、飲み食いしながら経営が学べるわけがない。
こんな高い参加費を払ってくるバカがどこにいる。
私はだれからも経営について教わってない。
やることは一つ。さっさと会社に戻って仕事に励みなさい。』
参加者はグウの音も出ない。
この本の作者曰く、
本田さんはつまり、畳水練のバカバカしさを私たちに教えていたのです。
畳の上で泳ぎを習ったところで、泳げるようにはならない。
それもいきなり水に飛び込んで、無我夢中で手足を動かせ。
現場で自ら汗をかかないかぎり、経営なんて学べやしないのだ。
なるほど・・・。
本田宗一朗も凄いが、その意図を深く読みとった作者も凄い。
作者は現在、京セラとKDDIの名誉会長を勤める稲盛和夫氏。
熱い時代の熱いエピソードである。