メッシ君

ある強豪高校サッカー部員の男の子が、体を傷めてお店へやってきた。


将来を期待して彼をメッシ君と呼ぼう。


メッシ君は今の段階で練習ができない状態。


今年3年生だが、県体は出場せず、ケガを治すことに専念するそうだ。


なんとか四国大会には間に合わせてあげたい。


冬の選手権は万全で試合に出場させてあげたい。



去年も大事な試合を前に、身体を傷めてうちの店へやって来た。


でもメッシ君はいつも気持ちが前向きだ。


話を聞いていると、メッシ君が監督への信頼が厚いのがわかる。


部活の監督なんて、選手から煙たがられているのが普通だ。




監督にこう言われたらしい。


『ケガをしていて、体でサッカーの練習が出来なくても、頭で練習は出来る。』

監督はメッシ君に、1年生チームの監督を任せた。


体が動かせない期間、メッシ君にサッカーの戦術をより深く勉強させるためだ。

私はこの話を聞いて鳥肌がたった。


そこまで生徒を信頼している監督。


立派な方なんだろう。





1年生チームだけでの県外遠征。

 

 

彼は責任者として、1年生のチーム監督として、県外で数試合をこなした。


どの選手を使うか。


どのフォーメーションを採用するか。


すべてメッシ君に委ねられた。


彼は悩み、考えた。



メッシ君は、ヨーロッパの名門チームの試合をビデオで観まくって勉強した。


サッカーの本も読み漁った。(キャプテン翼とかではない)


近代のサッカーはなにやら複雑そうだ。


彼が目を輝かせて語る、自分のサッカー持論。


私は聞いていてサッパリ解らない。




でもケガをして1年生チームを任された期間。


下級生に自分の考えを伝え、理解・納得させる難しさ。


思い通りに人が動かないもどかしさ。


チームの戦術が上手く機能した時の達成感。


そのすべてが彼の財産になるに違いない。




メッシ君が将来、優秀な選手になるか、素晴らしい指導者になるのは間違いない。


その前に、早くケガから復帰し、フィールドで走らせてあげたい。

 

 

 

 

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