北風と太陽

日本代表がW杯出場を決めたあの日、渋谷は大混乱が予想された。



興奮したサポーターが暴れてしまうのである。


阪神が優勝した時の、道頓堀川を思い出して頂くとイメージしやすい。


 


しかし、大きな混乱は起きなかった。


逮捕者や怪我人もなかったようだ。


一体なぜだ?


その答えをテレビで知った。


なんだか警官の様子がいつもと違う。


『静かにしなさい。』

という、いつもの低音で事務的な語り口ではない。



テレビは、スピーカーを持ってサポーターを制止する一人の警官をとらえた。


彼の語り口は、熱狂したサポーターに共感し、歩みよるものだった。




警官『私もみなさんと同じく、日本がW杯出場を決めて嬉しく思います。』


警官『こんな良き日に、お巡りさんも怒りたくはありません。』


警官『みなさん騒がずに移動してくれると、約束してくれますね?』


サポーターの皆さん『ハーイ\(^O^)/』



すんげぇ。


この人。




 

興奮するサポーターを一つにまとめた。

 


人の心が何たるか、わかっているのだろう。




強く抑えつけたら人は抵抗する。


でも、歩みよれば人はわかってくれるのだ。


まるで北風と太陽である。

 




すんげぇ。


この人。








 

 

 

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