私がまだ21歳の頃。
当時、広告の仕事をしていた。
私のいた会社は弱小会社。
大きな会社からオコボレの仕事を貰って、なんとかしのいでいる状況だった。
だから大きな会社には逆らえない。
テレビ局や大手広告代理店から
『これやっといて。頼むね。』
簡単な一言で、お金の発生しない膨大な仕事を頼まれてしまう。
それが当たり前。
頼まれ事を終えて、自分の仕事を終えると、いつも夜中の2時とか3時だった。
毎日、歯を喰いしばって猛烈に仕事をしていた。
『いまに見てろよ』
という反骨精神が私の原動力だった。
あるテレビ局で、いつも営業成績トップのXさんという30代の男性がいた。
Xさんは、なぜだか私を可愛がってくた。
よくお昼ご飯に誘ってくれたり、大事なクライアントを紹介してくれたり。
しかも、Xさんだけは私に無茶な頼みごとをしてこなかった。
ある年の、テレビ局の忘年会。
テレビ局の社員と、広告代理店、クライアント。
業界の偉い人が、ギュギュッと集まった総勢200人。
そのなかにポツンと私。( ゜Ω゜) ポカーン
明らかにそのなかで一番若いし、一番ペーペー。
テレビ局の営業マンは、みんな大事なクライアントのお酌にまわってる。
Xさんは、なぜだかビールとコップを持って、私のところにやって来た。
『坂本くん、やりゆうかね。』
と言って私にビールを注ぐ。
私はXさんのクライアントではなく、会社の後輩ですらない。
別会社の下っぱの私になぜ?
Xさんに思い切って聞いてみた。
『なんでXさんは僕に良くしてくれるんですか?』
Xさんが淡々と答えた。
『大物になった人よりも、これから大物になる人を大事にせないかん。』
『若い人と一緒におった方が、勉強になるし刺激をもらうやろ。』
『将来なにかと助けてもらうと思うしね。』
うーむ。
やはりトップになる人は懐が広い。!!Σ(;゚ω゚ノ)ノ
こんな人がトップになるのか。
世の中捨てたもんじゃない。
そう思えた。
お給料はガマン代。
仕事とは理不尽なもの。
そう卑屈になっていた私に、Xさんだけは仕事の楽しさと、『人としての在り方』を教えてくれた。
心の師匠は、同じ会社にいるとは限らない。
同業者とも限らない。
結局、私は広告業界を去り、整体師になった。
でも、Xさんの教えは、この仕事を通じて連鎖していこうと思う。
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