アゴと頭突きの女王

赤ちゃんが産まれた次の日、長女と家で祝杯をあげた。

 

 

シャンパンではなく、酎ハイとリンゴジュースであったが。

 

 

 

 

 

次女を出産した後、ヨメと赤ちゃんは入院。

 

 

 

というわけで、私と3歳の長女との二人暮らしが始まった。

 

 

 

 

 

ヨメがいない間は、もちろん私が長女のお世話をする。

 

 

 

私が長女の髪をくくると、野武士のようになる。

 

 

 

一戦交えた後の三船敏郎のようでカッコいいのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ヨメがいないと、一家の主は自分だと言わんばかりに長女は威張り散らす。

 

 

 

父と娘というより、女王様と召使い。

 

 

 

 

 

長女のパジャマを間違えた。

 

 

ただそれだけで、小姑のようにネチネチと小言を言う。

 

 

 

『 違うろーがえーヾ(。`Д´。)ノ』

 

 

『鬼さんよぶでーヾ(。`Д´。)ノ』

 

 

『わかったかえーヾ(。`Д´。)ノ』

 

 

『もー間違えなよーヾ(。`Д´。)ノ』

 

 

 

私はひたすら平謝りする。

 

 

 

娘は大きくなると、ヨメやおかんのようになると言うが、うちのチビはかなり早熟らしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

二人暮らし2日目の夜に事件は起きた。

 

 

 

長女がベッドの上に立っていた。

 

 

すぐそばに立っていた私に、ジャンプしてしがみ付こうとしたらしい。

 

 

しかし、勢いよくジャンプした時、長女の頭頂部が私のあごにクリティカルヒットした。

 

 

 

長女の頭突きには、過去何度か痛い目をみた。

 

 

 

しかし、今回はシャレにならんほど痛かった。

 

 

 

下唇がざっくり切れた。

 

 

 

次の日、歯型にそって口内炎になり、歯が少し欠けていた。

 

 

過去最高に痛い口内炎であった。

 

 

 

ちなみに長女の頭は全く平気である。

 

 

 

 

 

 

痛い(ノД`)・゜・。

 

 

 

痛いけど、ヨメは出産でもっと痛かっただろうから我慢だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ヨメの入院が3日目ともなると、淋しさからか長女はグズグズ泣き出した。

 

 

 

その日は私に、泣きながらずっとしがみ付いていた。

 

 

 

ヨメが家からいなくなり、私までいなくなると思ったらしい。

 

 

 

 

しかし、まわりに人がいる時は女王様で通す。

 

 

 

ヨメの入院部屋へ行き、私の両親やヨメの両親がいると、みんなの前で私を虐げる。

 

 

 

 

 

さらに私が、赤ちゃんを抱っこしようとすると、

 

 

『いかん!いかん!ヾ(。`Д´。)ノ』

 

 

 

と長女はカンカンに怒りだす。

 

 

 

赤ちゃんを独占したいのか。

 

 

でもバーバやジージが抱っこしても怒らない。

 

 

 

 

 

 

その日の夜、長女に聞いてみた。

 

 

 

私『お父さん、赤ちゃん抱っこしたらいかんの?』

 

 

 

長女『いかん!いかんヾ(。`Д´。)ノ』

 

 

 

私『ジージやバーバは抱っこしてえいの?』

 

 

 

長女『えいの+゚。*(´▽`*)*。゚+ 』

 

 

 

 

 

次の日。

 

 

 

ヨメにその話をすると、

 

 

『赤ちゃんを独占したいんやなくて、お父さんを独占したいんやない?』

 

 

とヨメは言ってくれた。

 

 

 

つまりは、

 

 

お父さんが赤ちゃんを抱っこするのを防いでいるのではなく、

 

 

自分以外の人間が、お父さんに抱っこされるのを防いでいる。

 

 

独占したいのは、赤ちゃんではなくお父さん。

 

 

 

というわけだ。

 

 

 

 

 

なるほど~( *´艸`)

 

 

 

可愛いとこあるぢゃね~か。

 

 

 

石頭やけど。

 

 

 

 

 

周りに人がいたら、とことん私を虐げる。

 

 

 

でも、家に帰って2人きりになると、体をスリスリしてきて甘えん坊さんになる。

 

 

 

ツンデレというやつだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。

 

 

私が赤ちゃんの頬っぺたを触ると、

 

 

『いかん。汚いろ。ヾ(。`Д´。)ノ』

 

 

と言って、長女は自分の手で私が触ったところを拭いていく。

 

 

 

うーむ(ーー;)

 

 

私を独占したいというより、ただ赤ちゃんを触らせたくないだけの気がしてきた。

 

 

 

というわけで、長女が怒る(淋しがる?)ので、それ以来、私は赤ちゃんを抱っこしていない。

 

 

 

 

 

 

 

この数日間の2人暮らしは大変だった。

 

 

 

壮絶を極めた。

 

 

 

長女が夜通し泣いた日もあった。

 

 

 

 

仕事が終わった後、

 

 

ヨメと赤ちゃんのいる病院へ行き、

 

 

家へ帰って長女を寝かしつけた後、

 

 

晩御飯を食べ、洗濯物をたたんで

 

 

次の日の長女の用意をした。

 

 

 

 

長女は淋しさに耐え、私は口内炎の痛みに耐えて頑張った。

 

 

そして、二人でなんとか乗り切った。

 

 

 

この数日間で、父と長女の絆は深まったのであった。