布団のなかの冒険

『おしいれの冒険』という絵本がある。

 

 

子供にとって、押し入れは十分冒険に値するのだ。

 

 

さて、我が家はヨメと赤ちゃんが和室で寝る。

 

 

 

私と3歳の長女は寝室で寝る。

 

 

 

 

 

長女は寝る時

 

 

『かくれんぼしよっ』

 

 

と言ってくる。

 

 

かくれんぼと言っても、お布団のなかに二人で隠れるだけ。

 

 

長女にとっては、お布団のなかは冒険に値するのだ。

 

 

 

『早く!鬼さん来るよ。』

 

 

『オオカミが来た!隠れて。』

 

 

と長女は言って、私と布団のなかに隠れる。

 

 

 

ある日、かくれんぼに飽きた私は、ある演出を行った。

 

 

右手で長女の足を引っ張り、左手で長女を抱きしめる。

 

 

右手は怖い鬼さん、左はそれから護るお父さん。

 

 

という一人二役。

 

 

 

 

長女はギャーギャー泣きながら私にしがみつく。

 

 

お布団のなかは暗いから、長女は私が足を引っ張っていることに気付かない。

 

 

私が鬼さんをやっつけた(という設定)後は、父を尊敬の眼差しでみる長女。

 

 

 

 

 

しかし、これだけ怖い思いをしても、次の日は必ず

 

 

『かくれんぼしよっ』

 

 

と言ってくるのだ。

 

 

 

 

 

一人二役に疲れた私は、さらに演出を加えた。

 

 

 

 

なんと、私が鬼さんに足を引っ張られる。

 

 

という自作自演である。

 

 

『鬼さんに足を引っ張られゆう!』

 

 

と言いながら、ずりずりとベッドの下の方へとズレていく私。

 

 

 

 

長女は泣きながら、私の腕を一生懸命引っ張る。

 

 

もう、私の下半身は崖の下(の設定)(現実はベッドの下)まで落ちている。

 

 

下手すれば、長女も巻き込まれて崖の下へ落ちる。

 

 

しかし、勇敢にも長女は私を引っ張る。

 

 

 

 

『元気でね』

 

 

とお別れの言葉を言うと、

 

 

長女は

 

『イヤダ!おとうさ~ん 。゚(*´□`)゚。』

 

 

と泣きながら最後の力を振り絞り、私を救出した。

 

 

つまり、私は腹ばいでヨイショっとベッドに上がった。

 

 

 

父を助けてくれた長女をたいそう褒めてあげた。

 

 

長女もまんざらでもない顔をしている。

 

 

 

 

 

二人は奇跡の生還を抱き合って喜んだ。

 

 

 

最後に、

 

『ありがとう』と言って

 

 

長女のほっぺにチュッヽ(o´3`o)ノ っとやったら、

 

 

長女は顔をしかめて、汚いものを拭くように、

 

 

手でゴシゴシほっぺを拭いたのであった。ミ(ノ_ _)ノ=3 ドテッ!!

 

 

くそー。

 

このガキんちょ。

 

可愛くねー。

 

 

 

 

 

 

 

そして、次の日。

 

 

また

 

『かくれんぼしよっ』

 

と催促してくるのであった。