先日来ていた患者さんで、面白い人がいた。
その人は40代男性、仕事はガテン系だ。
彼は年間の半分以上をタンクトップで過ごす。
昭和の肉体はタレントのような風貌である。
そして、まだ5月なのにビックリするほど日焼けしている。
『日焼けすごいですね。』と言うと
『うん。なるべく焼くようにしちゅうがよ。』
という返事が返ってきた。
真夏に夏バテしないよう、今からタンクトップを着て焼くようにしているのだ。
なんでも、日焼けをしている方が暑さをはね返すらしい。
彼には独自の健康哲学があり、なんだか話を聞いていて楽しい。
真夏に長袖を着て、手袋までして・帽子・サングラス・マスクまでして、お日様を避ける人がいる。
なんだがマイケルジャクソンを見ているようで、健康的な気がしない。
そんな人より、タンクトップの彼の方が元気モリモリである。
カイロプラクティックの哲学のなかに、in side out(内から外へ)というものがある。
これは2つの意味があって、
1つ目は、人間のエネルギーは、体の内部(背骨)から外に向かって発信している。
という考え方と、
2つ目は、体の外にある有害なものを防御するよりも、体の内側にある抵抗力(自然治癒力)を高めよう。
という哲学である。
※体の外の有害なものとは、偏った食生活・環境汚染・紫外線・重力・精神的なストレス・薬の副作用などである。
タンクトップの彼は、紫外線を防ぐのではなく、自ら取り込んで調和するという離れ業を実践しているのだ。
なんだかカイロプラクティックの哲学に近い。
それ以外にもこだわりが沢山あって、彼はエアコンを全く使わないらしい。
『エアコンつけちょったら、外に出た時によけい暑く感じるろうがえ。』
だそうだ。
暑さも寒さも、いろんな菌やストレスも、避けていれば人間は適応力がなくなってしまうのだ。
彼は理にかなっている。
タンクトップの理論はよくわからないが。
『腰は痛いけど、体が健康でしょ?』と私が聞くと、
『うん。おかげ様で。』と答えてくれた。
こういう人は健康に違いないと思う。
タンクトップの理論はともかく、とにかく前向きに生きているのだ。
健康番組が増えた今日この頃。
テレビの情報を鵜呑みにしている人が、なんと多いことか。
そして、情報過多のために、目に見えない有害物質に怯えて暮らす人が多い。
本来ありもしない、マスコミがつくりだした架空の毒素を防ぐために、大金を払う人も多い。
なぜ彼が健康だと思ったかというと、体の外の有害物質を恐れていないから。
だから自然治癒力が高いと思ったのである。
それに対して、紫外線・バイ菌・環境汚染・食物の有害物質など、過剰に情報を持っていて、日々怯えて暮らす人もいる。
残念ながら、それでは情報量に反比例して健康ではなくなる。
外部にある毒を恐れて生活するよりも、体の内部の抵抗力を高める生活の方が、元気で充実した人生が歩めるはずである。