正直者

長女のパンツが保育園でなくなった。

 

 

たぶん水泳のお着替えで、誰かが間違えて持って帰ったのだ。

 

これ自体は些細な出来事だ。

 

 

 

『パンツがなくなったことを先生に言った?』

 

とヨメが聞くと、

 

 

 

『ちゃんと言った。』

 

と長女が答えた。

 

 

 

『先生はなんて言った?』

 

 

『探してくれた?』

 

 

とヨメが聞いても、まるで政治家のように曖昧な答弁を繰り返す長女。

 

 

 

きっと先生に言い忘れていたのだ。

 

 

ただ、それを言うと叱られると思ったのか、5歳の長女は正直に言わない。

 

 

 

 

 

実はこの前日も長女はウソをついてこっぴどく叱られた。

 

 

2歳の次女のオモチャを、自分の玩具箱に隠していたのだ。

 

 

私もヨメも長女が隠したと薄々わかっていた。

 

 

長女が正直に言ってくれるのを待っていたのだ。

 

 

結局は、長女はバレるまでウソをつき通そうとした。

 

 

 

 

 

子供は叱られないよう、防衛本能でウソをつく。

 

 

ウソはつかないほうが良い。

 

 

というのを、どうにかして長女に伝えたかった。

 

 

 

 

 

長女とお風呂に入っているとき、 もう一度聞いてみた。

 

 

 

 

もはや、パンツはどうでも良い。

 

 

長女がウソをついて解決しようとしているのが気になる。

 

 

 

 

私『ちゃんと先生にパンツのこと言ったの?』

 

 

長女『言った。』

 

 

 

 

私『言うの忘れちょったがやない?』

 

 

長女『...言った...』

 

 

 

 

私『お父さんウソついたら怒るで。』

 

 

長女『うん…』

 

 

 

私『本当のこと言うたら怒らんきね。』

 

 

長女『うん…』

 

 

 

 

私『パンツのこと先生に言った?』

 

 

長女『…言った。』

 

 

 

この時点で私はブチ切れそうだったが、まだ叱ってはダメだ。

 

 

5歳児とはいえ、自尊心がある。

 

 

『今までウソをついておりました。(≧▽≦)ゞ 

 

とは言い難いのだろう。

 

 

 

それと、『先生に言い忘れた。』

 

 

と言えば怒られるかもしれないと警戒していると思う。

 

 

ここは北風と太陽だ。

 

 

ジワジワと攻める。

 

 

 

 

私『先生にちゃんと言ったが?』

 

 

私『じゃあ明日先生聞いてかまん?』

 

 

長女『いかん。いかーん˚‧º·(˚ ˃̣̣̥⌓˂̣̣̥ )‧º·˚

 

 

そらシッポがでた。

 

 

 

私『じゃあ本当のこと言って。』

 

 

 

長女『…小さい声で先生に言ったき、聞こえてないかもしれん…』

 

 

 

くそぉ。まだ粘るか。(ー ー;)

 

 

こうなると、殻に閉じこもる。

 

 

今までこのパターンでウソを認めたことは一度もない。

 

 

 

 

 

私が長女を追い詰め過ぎたのだろうか。

 

 

もっと叱ったほうが良いのだろうか。

 

 

もっとフランクに聞いてあげたら、本当の事を言い易いのだろうか。

 

 

いつも悩む。

 

 

 

 

 

 

結局お風呂では真実を明かさなかった。

 

 

 

お風呂をでて。

 

 

晩御飯を食べて。

 

 

絵本を読んで。

 

 

オモチャをお片づけして。

 

 

歯ブラシして。

 

 

長女がもう寝室へ行くときに、私のところへスーッときた。

 

 

 

 

長女『やっぱり言ってなかったかもしれん。』

 

 

 

私『…そっか…』

 

 

私は長女を抱き締めて、うんと褒めた。

 

 

 

きっと、お風呂からでたあとも、ウソをつき通すか、本当のことをいうか考えていたに違いない。

 

 

叱られるのを覚悟で、勇気を振り絞って私に真実を言いに来たのだ。

 

 

私は嬉しかった。

 

 

長女も嬉しそうだった。

 

 

 

 

ウソをついたら叱られる。

 

 

本当のことを言えば許してもらえる。

 

 

というのを長女は身を持って体験した。

 

 

 

 

 

また一つ、長女は学んだのであった。

 

 

娘たちが、正直な人間に成長してくれたら嬉しい。