占い

 

 

今から約15年前のお話。

 

 

整体の勉強をしていた私は、開業の準備をするため、会社を辞めて高知へ帰ってきた。

 

 

しかし、開業してやっていけるのかという不安で毎日押しつぶされそうであった。

 

 

そんな時、知人の紹介で、愛媛にある有名な占いへ行ったのであった。

 

 

そこの占いは守護霊が見えるという先生がいて、直接クライアントの守護霊と話をして未来を聞くというものだ。

 

 

 

 

私『自分でなにか商売がしたいのですが、なにが向いてますか?』

 

 

占い師 『うーむ。君は喋りには向いてないようやな。うん?ふーん。(守護霊と会話中)

 

 

占い師 『坂本君は手を使った商売がえい。手を使った仕事なら君は天才や(と守護霊が言っているそう)

 

 

占い師『えいか。野球が上手い奴は、野球の強い高校へ行くやろ?

その一握りだけがレギュラーになれる。』

 

 

『そのなかでさらに限られた人だけが甲子園に行ける。』

 

 

『でも甲子園へ行った奴はみんな天才か?そんなことはない。』

 

 

『甲子園にでれる奴なんて年間何百人もおる。』

 

 

『天才ってのは松井(秀樹)みたいな奴の事を言うんや。』

 

 

『歴史を変えるようなやつを天才っていうんや。』

 

 

『君にはその才がある。』

 

 

 

 

私『イエス!イエス!イエ~ス』

Σd(゜∀゜d)ォゥィェ!!!

 

 

とガッツポーズを繰り返しながら高知へ帰った。

 

 

『おれ天才。』

 

 

『やっぱり。』

 

 

そして、満を辞して『さかもと整体院』を開業した。

 

 

 

 

結果は皆さんご想像の通り。

 

 

世の中そんなに甘くない。

 

 

8月1日に石立町のアパートの一室で開業。

 

 

開業して1週間での来店がわずか2名。

 

 

1人目は高校の友達。

 

2人目は見るに見かねたアパートの大家である。

 

 

 

 

 

夜間に工場でアルバイトをしながら、ギリギリ家賃を払っていた始末である。

 

 

おかしい。

 

 

天才のはずやのに。

 

 

 

 

 

 

 

開業して1年ほどで、私はもう一度愛媛へ飛んだ。

 

 

  『前回、手を使った商売やったら天才って去年言われたんですけど。なかなか上手くいかないです。』

 

 

占い師『整体?うーん(守護霊に相談中)』

 

 

占い師『坂本君。違ったわ。整体やない。料理やわ。料理人やったら天才やわ。整体は違う。』

 

Σ(°д°lll)ガーン

 

 

料理?

 

 

整体やない?

 

 

え?

 

 

私はあしたのジョーの最終回のように、真っ白くなった。

 

 

 

 

 

 

今から料理人を目指すのか?

 

 

と、一瞬頭をよぎったが、それはない。

 

 

料理には全くインスピレーションを感じない。

 

 

とにかく私は味音痴で有名なのだ。

 

 

とにかく整体を辞めようとは思わなかった。

 

 

この仕事が好きだったのだ。

 

 

 

 

才能がないのかもしれない。

 

 

だが、私は粘った。

 

 

それから夜はずっとバイト。

 

 

開業して3年間は、休みの日にマッサージのチェーン店でバイト。

 

 

4年目5年目は土日を定休日にして、高松のカイロの学校に通った。

 

 

 

 

開業して6年目でやっと定休日に休めるようになった。

 

 

丸5年間はまったくの無休だったのである。

 

 

開業して6年目で、やっと夜のバイトも辞めて、今の南久万の店舗に移転した。

 

 

それからさらに8年間、東京へ修行に行ったり、鼻血がでるほど勉強して現在に至る。

 

 

 

 

 

 

いま思えば。

 

 

人になにを言われようが関係ない。

 

 

 

『君には向いてない。』

 

と言われて辞めるくらいなら、もともとダメだったのだ。

 

 

 

人に『才能がある』と言われて舞い上がったり、『向いていない』と言われて落ち込んだり。

 

 

結局は自分の心が甘かったのだ、と後から気付いた。

 

 

 

 

 

 

『運命よ、そこをどけ。オレが通る』

 

 

と言ったのは、マイケル・ジョーダンという冗談にならないくらいバスケットが上手な人だ。

 

 

彼は運命すら受け入れない。

 

 

『今日は負ける運命だったのだ。』

 

 

誰もがそう思えるような試合でも、それを自らの手で退け勝利を手にしてきたのがジョーダンだ。

 

 

ジョーダンは、運命というものの力すら及ばない次元で戦っていたのである。

 

 

 

 

 

 

人は、重くつらい、乗り越えられそうもない事実に向き合うと頓挫する。

 

 

開業したころ、今でもそうだけど、自分の手先の不器用さには愕然としてしまう。

 

 

でも、鼻血がでるほど練習すれば良いだけのことだ。

 

 

そうすれば、少しずつではあるが高度なテクニックもできるようになった。

 

 

向いているか向いていないかなんて、悩む必要はない。

 

 

才能がある奴等の、想像も及ばない努力をするのみだ。

 

 

 

 

 

 

 

今回14周年で、開業した頃の出来事を思い出し、初心に戻ることができた。

 

 

 

開業した頃の苦労とか葛藤のうえで、今があるのだと思える。

 

 

今が人生で最高に楽しい。

 

 

 

去年より今年のほうが楽しい。

 

 

来年はもっと楽しくなるだろう。

 

 

 

 

20周年のとき。

 

 

50周年のとき。

 

 

自分がなにを思うのか楽しみである。