12時に家を出ようと思ったのに。
入学式は12時半からなのに。
私・嫁さん・長女の3人は11時45分の時点でまだ洋食屋でご飯を食べていた。
入学式までの空き時間に用事を一気に片付け、さらにお店で御飯まで喰らおうと企てたらこんな事態になった。
長女よ、覚えておくがよい。
父と行動を共にすると、ゆとりなんかない。
常にスケジュールはタイトだ。
一行は、一旦家に帰り、急いで着替えて、徒歩で小学校へ。
入学式にはなんとか間に合った。
まずは校長のご挨拶。
『皆さんにお願いしたいことが3つあります。』
『まず1つ目が早寝、早起き、朝ごはん。』
すでに3つあるじゃん。
という心のツッコミをよそに次のお約束。
『2つ目は元気なあいさつ。』
『3つ目は車に気をつける。』
校長は優しい口調で、うちの娘にも分かる言葉で、簡潔に話してくださった。
立派な校長だとすぐに分かった。
それよりも私の心を打ったのが、6年生代表者の歓迎の言葉。
内容云々ではない。
ハッキリとした口調で、体育館に響き渡る声量、さらにボディランゲージを使って挨拶してくれた。
まるでミュージカルを観ているかのようだった。
この前日、東京の勉強会で私も人前で挨拶をしたが、口調はモゴモゴ、体はモジモジ、内容はグズグズであった。
挨拶後、6年生は拍手の嵐。
挨拶後、私は失笑の嵐であった。
私の挨拶より6年生の方が僅差で軍配が上がった。
6年生は、それほど素晴らしい挨拶だった。
うちの子も数年後にこんなに立派になるのだろうか。
家に帰ると、長女は校長の挨拶を忘れないように紙に書いていた。
驚くことに、長くて難解だったPTA会長の挨拶も長女は覚えていた。
私と同じく、いずれ神童と呼ばれるに違いない。
次の日。
この日から小学校の普通登校。
長女の教室は校門を抜けてすぐで、外からでも教室の様子が一望できる。
窓から外を眺めている1年生がいた。
長女の隣の席になった女の子だ。
彼女は窓から長女を見つけると満面の笑みになった。
さらに手を振って、走って玄関までお迎えに来てくれた。
長女の到着を心待ちにしてくれていたのだ。
いいなぁ。
もう自分を待っててくれる人がいる。
大切にするんだよ。