レオマワールドに朝イチ到着。
その日はお天気も微妙なことから、客入りはガラガラ。
いつもは並んで並んでひらすら待って乗るジェットコースターも、この日ばかりは乗り放題。
7歳の長女は飛び上がって喜んだ。
今まで見たなかで一番高いジャンプだ。
朝イチからジェットのコースター。
しかも連続して乗った。
私はなんだか酔ってきた。
その直後、パイレーツという船の振り子のやつに乗った。
長女が大好きなやつだ。
これはなんと5連続。
長女に付き添って乗った。
かなり吐きそうだ。
お腹がタプタプしてきた。
長女は絶好調。
お客が増える前に他のアトラクションも乗りまくる計画らしい。
長女が選んだのはバードフライヤー。
最もヘビーなアトラクションをチョイスした。
バードフライヤーは、上空50mまで上昇して、チェーンにぶら下がった椅子がグルグル上空を廻るやつだ。
とても吐きそうだ。
怖いとか楽しいではなく、吐きそうだ。
『ケータイや鍵などの落下物があれば、機械が停止します。』
『くれぐれもポケットの中身は何もいれないでください。』
と繰り返してアナウンスをしていた。
上空50mで旋回しながら、私のゲロが落下すればどうなるか。
機械停止どころか園内が恐怖の惨劇となる。
きっとレオマは出禁となるだろう。
きっとニュースにもなるだろう。
きっと翌日のNHK『おはようニッポン』で放送されるはずだ。
きっと娘たちは学校でイジメられるだろう。
きっと末代まで語り継がれるだろう。
上空50mで大ピンチだ。
この上なく酔ってきた。
口から酸っぱい唾液がでてきた。
今日はしょうゆ味だ。
カナブンのように鍛えたはずの腹筋は、イモリのようにプニプニとなっている。
お腹が緩んでいる証拠だ。
今すぐにでも吐きそうだ。
目の前に便座があれば、2秒で吐ける。
もうそこまでお迎えがきている。
一瞬でも気を抜くとやられる。
こんな状況でも、私は隣に座っている次女がアトラクションから落ちないように腕をつかんでいた。
吐くよりも、長女が落下する方が困る。
私はアトラクションが終わった後、ダッシュで吐きに行ける場所を上空から探した。
人が行き交う場所で吐くわけにはいかない。
自分のリバースしたものが、公衆の面前に晒されるのはなんとも忍びない。
降りてすぐ脇に花壇がある。
ここなら吐いたものを最小限に隠せる。
お花たちの肥料にもなるから一石二鳥ってやつだ。
そんな事を思いつつ、やっと終了。
あと2分廻っていたら確実に吐いていた。
上空から下々の人にゲロを撒き散らすという大惨事は回避できた。
だがこうなると、地上に降りて公衆の面前でゲロを吐くという失態も避けたい、と思うのが世の常だ。
乗り物が終わった後、すぐに解散ではない。
乗った人全員が荷物を回収したのを確認してからの解散だ。
万事休すか?
否。
私は冷静だった。
花壇までの正確な位置と距離を、私は把握していた。
最悪の事態まで想定できている。
私は冷静にヨガのカパラバティ呼吸法で酔いを鎮めた。
そしたら落ち着いてきた。
花壇ではなく私はトイレへ向かった。
どうやら大丈夫なようだ。
その後は揺れの少ないアトラクションを選んで乗った。
遊園地のなかで最も揺れの少ないアトラクションへ向かった。
お化け屋敷だ。
ここなら私の三半規管も安心である。
だが長女が飛び上がって泣き始めた。
長女は今まで見たなかで、一番高いジャンプを更新した。
お化け屋敷なんて全然平気やのに。
なんとも気概のない長女である。
きっと長女も同じことを思っただろう。
ジェットコースターなんて全然平気やのに。
なんとも頼りないお父さんだ。