整体院を開業する前。
私はあるコンサルタントの会社に就職した。
その会社では、東京本社で2週間ほど社員研修あり、その期間は私にとって忘れられない時間となった。
とても過酷な研修だったし、学びが多かったから、今でもちょくちょく思い出しては反省する。
この研修は5人で1チームとなって行われた。
同じチームには50歳ほどの元大手銀行の幹部Aさんや、元商社でバリバリのキャリアウーマン30歳のBさんもいた。
このAさんとBさんと私の3人で、ミーティングでは意見をバチバチに出し合ってしのぎを削った。
ほかの2人は我々3人に圧倒されて、ほとんど意見を出すことなく黙って聞いていた。
研修で多かったのが、チームでのコンセンサス。
お題をもらって、5人でコンセンサス(意見を一致させる)をとるのだ。
たった3分で。
もし自分が消費税は『増税すべき。』
という意見を持っていても、ミーティングで
『減税すべき』
と決まれば、あたかも元々の自分の意見が減税すべきだったかのように、プレゼンできなければならない。
コンサルタントとはそういうものらしい。
研修ではこのような訓練を徹底して行う。
その時のお題は『企業が存続していく上で必要なものは?』
これをチームで3分間で話し合い、意見をまとめて他のチームとプレゼンし合うのだ。
私は即座に『人材』と思った。
3分間のミーティングが始まると、すぐに私は自分の意見をみんなに伝えた。
なんせ3分しかない。
みんなは人材という意見に同意してくれた。
(ちなみに、会社側が用意していたこの問いの答えは『戦略』であった。)
私は意気揚々と我がチームの結論と、その理由をプレゼンした。
こんな感じでお題が次々と出され、ミーティングをしてプレゼンをこなしていった。
私は絶好調だった。
大活躍だった。
研修から15年以上経って、私はこの研修で大きな失敗をやらかしていることに気付いた。
当時では気付かなかったことが今では分かる。
反省の嵐である。
なんであの時、わずかな時間でも引っ込み思案の2人にも意見を聞こうとしなかったのか。
うちのチームはプレゼンで連勝したけれど、ほとんどのお題を3人の意見でまとめてしまった。
私がいきなり意見を言えば、引っ込み思案の2人はそれに乗っかるにきまってる。
そうなれば、あの2人の意見は永久に聞くことはない。
そして、それはチームとして出した結論とは程遠い。
元々私は、意見をバシバシ言える人間。
だから、他の人の意見を引き出す側に徹した方が、自分やチームの成長となったのでないか。
あの2人にとって、人前で自分の意見を言うのが成長に繋がったのではないか。
研修の目的はプレゼンで勝つことではなかった。
いかにしてチーム全体の意見をまとめるか。
どのような方法があって、どれが最善なのか。
それを試行錯誤するのが、この研修の目的だったはずだ。
この歳になって、ぼんやりと当時のことを思い出し
『ハッ (゚ロ゚; 三 ;゚ロ゚)』
と気づく。
研修の最終日。
この日は、2ストライク3ボールなるものを行った。
なんでも一緒に切磋琢磨したチームの仲間に、2つお褒めの言葉を贈り、3つダメ出しの言葉をカードに書いて贈るというもの。
カードを書くのも受け取るのも過酷な企画である。
研修の司会の方が、
『仲間の成長の為に、耳が痛くなることもズバリと書くこと。』
と厳しいお言葉を頂いた。
私はその言葉通り、厳しい意見を仲間にぶつけた。
特に大の仲良しとなったBさんには、彼女の成長のために、どストライクのダメ出しを書いた。
私は若かった。
バカであった。
私のカードを受け取ったキャリアウーマンのBさんは、なんと泣いてしまったのだ。
私は若かった。
バカであった。
調子に乗っていた。
2週間一緒に頑張った仲間を泣かしてしまった。
人に何かを伝えるというのは容易ではない。
いかにして伝えるのか。
どんな心で伝えるのか。
どんな言葉なら相手が受け入れるか。
真剣に考えなければならない。
この研修は本当に過酷だった。
この過酷な研修での学びは、今でも克明に覚えている。
今でも時々思い出して、参考にしたり反省したりと、まだ私のなかで研修は続いている。
最後に。
司会の方が伝えてくれた言葉がある。
『成長には痛みが伴う。』
この言葉は私の座右の銘となった。
たぶん、この研修で大きな痛みを味わったから時々振り返っているのだろう。
キャリアウーマンのBさんは、今でも最前線でバリバリやっているのかなぁ。