次女のガマン

 

 

ゴールデンウィークにて。 

 

 

キッザニアの閉館40分前。

 

 

一通り遊んだ後、あとひとつくらいギリギリお仕事体験ができるかどうか、という時間帯。

 

 

家族4人疲労困憊のなか、あちこち回ってみても、もうほとんど予約完売だった。

 

 

小2の長女も4歳の次女も疲れてはいるが、時間の許す限りお仕事の体験をしたいそうだ。

 

 

長女がかねてより希望していた『劇場』のお仕事体験に行ってみた。

 

 

ダメで元々だと思ったが、奇跡的に空きがあった。

 

 

 

 

 

だが、私とヨメさんは凍りついた。

 

 

一人分しか空きがない。

 

 

一人なら劇場に参加できる。

 

 

一人だけたまたまキャンセルがはいったのだ。

 

 

つまり我が家の姉妹のうち、一人は劇場に参加できない。

 

 

 

 

 

この状況で下の子に我慢させる親はいない。

 

 

かと言って、劇場を熱望していたのは長女だ。

 

 

4歳の次女が一人で稽古して、一人で踊ってもたぶんそれほど面白くはない。

 

 

 

 

 

どうする。

 

 

時間がない。

 

 

家族会議をひらいている時間もない。

 

 

二人ともジャンケンをしようとしない。

 

 

 

 

 

 

 

家族4人が絶句していた。 

 

 

いっそのこと、一人も空いてない方が話が丸くおさまる。

 

 

 

 

 

 

そんな時

 

 

『じゃあ私はえいわ。』

 

 

と次女が言った。

 

 

なんと4歳の次女が辞退すると申し出てきた。

 

 

次女は4歳にして我慢を学んだ。

 

 

すごい奴だ。

 

 

 

 

 

 

雨雲から、我が家に光が射してきた。

 

 

 

 

ここで我が家は素早く二手に分かれた。

 

 

長女の劇場はヨメさんが見守ることになった。

 

 

私は次女と他のお仕事を探す旅にでた。

 

 

 

 

次女が辞退を申し出てくれたのだから、なんとかして他のお仕事を探さねば。

 

 

 

 

 

 

とにかく時間がない。

 

 

私は次女を小脇に抱えて、キッザニアを走り回った。

 

 

 

 

 

閉館間際。

 

 

なんとかまだ空いているところがあった。

 

 

大使館だ。

 

 

なんとか手続きを済ませ、次女を大使館に押し込んだ。

 

 

4歳の子に大使館がなんたるか知る由もないが、なにもなくフィニッシュよりは良い。

 

 

 

 

 

 

 

ホッとして大使館をでると、その正面に劇場があった。

 

 

 

劇場の真ん前にある大使館が空いているのに気づかず、私は次女を抱えてキッザニアを一周してきたのであった。

 

 

我慢を申し出てくれた次女の心意気に、なんとか答えたくて私は必死だったのだ。

 

 

 

 

この夏、次女はめでたく5歳になった。

 

 

そしてまた来週、キッザニアへ行く。

 

 

子供たちは、またなにか学び、また成長するだろうか。