引退

 

『もうこの作品が最後だ』

 

 

と、宮崎駿は何度言ったか。

 

 

『もののけ姫』や『ポニョ』を作った後に、引退宣言をしていたらしい。

 

 

『風立ちぬ』で正式に引退宣言をした。

 

 

 

 

そして、また新作を作っているのだとか。

 

 

何度も引退撤回を繰り返している。

 

 

子供達に夢を与えるためだ。

 

 

 

 

 

 

 

大仁田厚は7回引退宣言と引退試合をして、7回復帰試合をしている。

 

 

もはや、引退宣言をしても誰も信じない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かくいう私も、何年も前から妻に引退を勧められていた。

 

 

もう何年も前から

 

 

『もうバレバレやから、しなくていいんじゃないの?』

 

 

と言われていたが・・・

 

 

子ども達に夢を与えるためだ。

 

 

今年で最後だから。

 

 

と毎年、一応着替えて登場していたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

キャンディーズが引退するとき、

 

 

「普通の女の子になりたい』

 

 

と言った。

 

 

私も普通のお父ちゃんに戻ろうと決めた。

 

 

 

 

 

 

 

山口百恵が引退のとき、ステージにマイクを置いて去った。

 

 

 

私もリビングでサンタの衣装を脱いで去って行けば、子供たちは驚くだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

今年はサンタに変身しないと決めていた。

 

 

サンタは引退だ。

 

 

長女が生まれてから7年間、ずっとサンタに変身してプレゼントを渡してきた。

 

 

長女が4才の時から正体がバレバレだった。

 

 

というか、着替えているのをもろに見られた年もあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1224日。

 

 

晩御飯の手巻き寿司を食べて。

 

 

子供達の手作りのケーキを食べて。

 

 

ボチボチ例年なら、お父さんが[『ソッ』と部屋から抜け出し、サンタが登場するタイミングだ。

 

 

 

 

 

しかし、このタイミングで、ばあばや私の姉が買ってくれていたプレゼントを子供達に渡した。

 

 

欲しかった鉄琴とバイオリンの玩具。

 

 

楽しそうな絵本。

 

 

かわいい冬用のコート。

 

 

子供達は夢中で鉄琴とバイオリンで遊ぶ。

 

 

 

 

 

私達夫婦の親と兄弟が、沢山プレゼントしてくれるので、サンタが渡すものがないのである。

 

 

それも引退の理由の一つ。

 

 

 

 

 

 

『もう遅いから早く寝なさい。』

 

 

子供達『はーい』

 

 

 

 

 

『あれ?サンタは?』

 

 

と一言も発する事なく、子供達は眠った。

 

 

もう、必要とされていないのだ。

 

 

サンタの引退は正しかったのだと身に染みた。

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。

 

 

私は枕を涙で濡らした。

 

 

 

 

 

子供達の枕には、サンタからお菓子のプレゼントを置いといた。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝。

 

 

枕元のお菓子のプレゼントを見つけて、子供たちは狂喜乱舞した。

ヽ(●´∀`)人(´∀`●)ノ

 

 

次女『サンタが来ちょった~』

 

 

長女『初めて本物のサンタ来たね!!』

ヽ(●´∀`)○´∀`)ノ

 

 

喜ぶ子供達をみて、これで良かったのだと思った。

 

 

 

 

 

 

5歳の次女が

 

 

『夜、トナカイが走っていくのが見えた。』

 

 

と言っていた。

 

 

 

次女はちゃんと、心の眼で見ていたのだ。