愛の貧乏脱出大作戦というのをご存じだろうか。
20年位前にやってたテレビ番組だ。
どんな内容かと言うと、ラーメン屋などのダメ店主が、達人のもとへ修行に行ってお店を立て直すやつだ。
なにか商売のヒントになればと思い、見始めた。
ラーメン屋でも、うどん屋でも、居酒屋でも、たこやき屋でも、ダメ店主はとことんダメな人が多い。
厨房は汚い。
暇な時間ボーっとしている。
お客が来なくても、なぜか味に自信だけはある。
頑固で素直さがなく、言い訳ばっか。
普段ボーっとしているもんだから、体力も集中力も胆力もない。
店ではレトルト食品ばっかりだしていて、ほとんど料理をしたことがないという強者もいる。
仕入れをするお金がなくて、お客さんが来たら目の前のスーパーで天ぷらを買ってきて、お皿に盛ってお客に提供するという強者もいる。
案の定、修行に行くと達人にこっぴどく叱られる。
そんなポンコツ店主をみていると、自分の方がまだマシだと癒される。
ちょっと叱られたくらいで達人に逆切れする人がいて、それがまた可愛い。
達人とポンコツ店主を比べると一目瞭然である。
なにが一目瞭然かというと顔つきだ。
達人は何かを突き詰めてきた精悍な顔つきをしている。
ポンコツ店主は緊張感のない顔つきをしている。
男は40歳を超えると、顔だなぁとつくづく思う。
生き様が顔にでるのだ。
ブチ切れてポンコツ店主を追い込む達人。
必死で謝るポンコツ店主。
許さない達人。
技術の前に、意識に問題があるのだ。
たった4日で根性を叩き直すには、どん底まで追い込むしかない。
達人にしがみついて、土下座して再修業をお願いする姿は涙がでてしまう。
本当は達人のもとで何年か修行をすれば良いのだが、借金があるので時間がない。
たった3日や4日でレシピを覚えなければならない。
私も経営者だからわかる。
商売はあまくない。
必死で死ぬ気でやって、その中で食っていける人がわずかなのだ。
死ぬ気でやるってのは、できなかったら家族が死ぬと思ってやることだ。
ポンコツ店主にも、嫁さんや小さい子供がいる。
少しずつ、ポンコツ店主の眼の色が変わってくる。
そして、どこかで覚醒する人がいる。
ポンコツが一人前に生まれ変わるのだ。
人が生まれ変わる瞬間を目の当たりにするのは、何度見ても鳥肌が立つ。
自分が初心を忘れそうなときは、愛の貧乏脱出大作戦を見るようにしている。
ポンコツ店主のダメっぷりを見るよりも癒されるシーンがある。
心を入れなおして一生懸命修行する店主の姿だ。
でも最高に癒されるのは、達人の人間性だ。
なんで、身内でもないダメ男の面倒をここまでみてあげられるのか。
感情で叱っているのではなく、ダメ男のために鬼になっているのだ。
きっと、そういう人だから達人になれたのだと思う。
下を見たらいくらだって下がいる。
上を見たらいくらだって上がいる。
どちらを見るか自分次第だ。
最初はポンコツ店主の目線で見ていた動画が、いつの間にか達人目線で見るようになっていた。
私はこの達人たちのようになりたい。
私も東京の達人のところへ修行へ行っている。
達人から見れば、私もポンコツなんだろう。
でも必ず追いついてみせる。
見ていなさい。