『風邪くらいじゃ休まんぞ。』
『てやんでぇ。』
今まではこんな威勢のいい江戸っ子風で通していたが、コロナ禍の今はそうはいかない。
6月に風邪を引いて、休んでしまった。
明らかに過労によるものだった。
お客さんにも迷惑をかけてしまった。
その数日後。
坂本カイロの緊急役員会議がひらかれた。
今回の議題は定休日。
水曜、祝日、第2日曜に加えて、第4日曜も定休日にするか否か。
事業本部長『今後20年30年と長いスパンで仕事していくなら、休みを増やすべきだ。』
マーケティング部長『休みを増やすと、売上が下がるじゃないか。』
北米担当室長『メリハリをつけるために、休みを増やす方が良いデス。日本人は働き過ぎデース。』
総務部長『でも日曜に休みを増やすのはリスキーです。今でも予約を断ってる人がいるのに。』
広報室室長『でも、子供と遊ぶ時間も増えますよ。』
財務担当『いやいや。なにを甘い事言っとんねん。日曜しか来れんお客さんもいるやんけ。』
経理部長『疲れ果てて、また風邪を引いたらお客さんにも迷惑かけるやろう。仕事終わって家帰ったら毎日抜け殻やないか。』
技術開発室長『やっぱり、週6勤務が続くと体力がもたんのよ。疲れてイライラしているときもあるやん。』
掃除大臣『大和男児が何を弱気な。我々団塊の世代は休みなんかなかったぞ。そうだ、月月火水木金金を当院の合言葉しようぞ。』
店舗開発本部長『慢性的に疲れてて、仕事のクオリティが落ちるなら、休みを増やしたほうがいいんじゃないでしょうか。』
人事部長『東京の大師匠は、40代50代は休みなくバリバリやっていたそうですよ。負けてていいんですか?』
専務『社長はどう思います?』
私『うーん。疲れが溜まって弱気になっていたかな。まだ休みを増やす年齢ではないかも。』
よし。まだまだ行くぞ。倒れるまで行くぞ〜。
私はいつも、お風呂で考える。
自分のなかの意見をだしつくして、熟考する。
今回は結論を出すまでに時間がかかり、湯冷めするところだった。
よし。泣き言は言ってられない。
弱気は最大の敵也。
休みなんか欲しがりません。勝つまでは。
風呂上がり、会長に会議の結果をサラッと報告した。
私『バリバリ路線を決行します。気合です。』
会長『もうそんなに無理せんでいいんじゃない?ちょっと休んだ方がえいよ。』
社長『そ・そ・そうですよねぇ。』
鶴の一声で決まった。
熟考したはずの結論がひっくり返った。
よし。休みを増やそう。
嫁さんが私に
『もっと頑張って。』
と言ったことは一度もない。
言う事はいつも決まっている。
『そんなに無理せんでいいんじゃない?』
私は、どうやらアクセルしか持ち合わせてないらしい。
走れるだけ走って、倒れるときは前のめり。
それが美しいと思っていた。
嫁さんは
疲れたらブレーキをかけるべし。
と、いつも教えてくれる。
たしかに、疲労困憊で仕事のクオリティが落ちるなら、休んでビシッと仕事した方がいい。
兎にも角にも。
水曜・祝日・第2日曜に加え、第4日曜も試験的に定休日と決定した。