岡田斗司夫のジブリ解説。
魔女の宅急便、第2弾。
風邪のシーンに込められた思い。
物語の序盤。
家をでる前に、13歳のキキは父親に『高い高い』をしてもらう。
『お父さん\(^o^)/』
と手を広げて立つキキに、父はすぐにキキの気持ちを察して高い高いをしてあげる。
挙句の果てに父は、
『辛かったらすぐに帰ってきていいからね。』
とキキに言い放ってしまう。
つまり宮崎駿は、キキの父親を優しいお父さんではなく、子供を過剰に甘やかしてしまうダメ親父と表現しているのだ。
きっと私も、高い高いをする親父だと思う。
そして物語中盤。
キキは風邪をひいて寝込んでしまう。
そこへパン屋の女将おそのが部屋へ入ってくる。
『ミルクがゆ作ったからね。』
とだけ言って、おそのが部屋から出ていこうとするシーン。
おそのは熱いミルクがゆを、親のようにフーフーしてくれるわけではない。
昨日キキになにがあったのか、聞くわけでも話しかけるでもない。
キキの心情は、風邪を引いているし寂しいので、おそのにもう少しそばにいてほしい。
おそのが部屋をでていく瞬間、キキは
『おそのさん』
と呼び止める。
『なに?』
とおそのは立ち止まる。
玄関から一歩だけキキに近づき、キキの方を向く。
『・・・なんでもない』
とキキは言い、おそのは立ち去る。
キキは『この部屋にいてほしい』という言葉をグッとこらえた。
このシーンだけで、キキが甘えを我慢するという成長が表現されている。
キキは『おそのさん』と呼び止めるとき、序盤の『おとうさん』と呼ぶときと全く同じ口調で呼んでいるらしい。
キキにとっておそのさんは、新しい街の親代わりなのだ。
だが、わざわざ親元を離れて修行に来ているののである。
おそのは甘えるための親でなく、成長のための親でなくてはならない。
『もうちょっとここに居て』
という言葉を我慢しているキキの気持ちを、すべて察して何も気づかないふりをして部屋をでていくおそね。
おそね最強である。
もし、おそのが一歩ではなく、キキの目の前まで歩いてきていたら。
恐らくキキはおそのに甘えてしまっていただろう。
おそのは絶妙な距離感で、キキを見守っていたのだ。
おそねアッパレである。
キキの甘えを察して、高い高いをしてあげる優しい父。
自分の娘でないがゆえに、過保護ではない優しさができるおその。
このシーンだけで、
『人間は親から自立していかないと成長できない。』
というメッセージが込められているらしい。
ちなみに、私の娘への愛情は、キキの父親の愛情に近い。
嫁さんの娘への愛情は、おそのの愛情に似ている。
私は欲求を満たしてあげたい。
嫁さんは我慢を教えてあげたい。
私は子供とオセロをしたら、ギリギリ負けるようにする。
嫁さんは子供とオセロをする時、全力で勝ちに行く。
私はオセロの楽しさ教え、
嫁さんは勝負の厳しさを教える。
なんという絶妙なバランス。
まるでミルクレープのようなハーモニー。
愛情とはバランスが大事なのだと思う。