馬路村には妖精が住んでいる。
みんな見に行くといい。
仕事で馬路村と取引があるという知人がいる。
その知人に、依頼していた箸袋をもらった。
ただの箸袋ではない。
馬路村の箸袋だ。
私がず~~~っと探していた箸袋だ。
この箸袋をみると、数年前に馬路温泉で泊まったときの事を思い出す。
馬路温泉に到着。
すると、あの商品イラストでお馴染みの、坊主で半ズボンの元気な少年が、至るところでお出迎えしてくれていた。
玄関では、
『よぉ来たねぇ。\(^o^)/』
あの元気なイラストと吹き出しで、来訪者を労ってくれる。
部屋の鍵。
サニタリー用のビニール袋。
トイレの入り口。
大浴場の入り口。
いたる所で、この少年が幾度となく登場する。
極めつけは、夕食のお箸袋にも少年のイラストとメッセージがあった。
『ねぇねぇ、どっから来たが?』
『とーいところ?』
『ねえ、おふろはいった?』
『ねぇねぇ。なまえは?ねぇ。』
これには目頭が熱くなった。
箸の袋を、ゆず商品のPRに使う。
というチョイスもあったはずだ。
そうではなく、馬路村は
『自らのカラーと、おもてなしの心を全面的にだす。』
という選択をしたわけである。
朝食はもっと素晴らしかった。
『おはよう。きのうは、ちゃんとねれたかえ。』
『川の音、うるそうなかったか?』
『ねぇ、ごはんたべたら、いっしょにあそばんかえ。』
これで客の心を鷲掴みである。
これでみんな馬路村のファンになる。
朝食を終えて外にでたら、坊主の少年が
『まちよったでぇ。 はよーいこーや。』
と釣り竿を持ち、我々を待っているような気分にさえなるのだ。
馬路村にいると、まるでこの少年の妖精がいたるところに宿っていて、お出迎えしてくれているかのような錯覚に陥る。
馬路村で、ブランディングというものを私は学んだ。
ブランディングとは、企業や店のもつイメージを築くことである。
吉野家だったら、うまい安い早い。
スターバックスだったら、高級感、おしゃれ。
馬路村は、このイラストの少年だ。
おしゃれや高級感のイメージとは皆無だ。
馬路村のイメージは、素朴さと元気。
そして、ホスピタリティである。
馬路村の商品を食べると、あの少年を連想して、なんだか温かい気持ちになり、元気がでるのである。
うちの店も、私のイラストを至るところに貼ってやろうかな。
入り口の玄関には、
『どこが痛いぞねぇ。ねぇねぇねぇ。』
帰りの玄関には、
『楽になったかねぇ。ねぇねぇねぇ。』
これで客の心を鷲掴みである。