ルネサス

数年前、ルネサス山口工場が閉鎖に追い込まれた。

 

 

小さな街で700人以上もの人が一斉に解雇されたのだ。

 

 

その行く末をドキュメンタリー式に取材していて、動画にあがっている。

 

 

 

 

私はこの動画が好きで、観ると気が引き締まるので、もう何回も観ている。

 

 

大成功している人の動画よりも、どん底から這い上がろうとしている人を見る方が私は燃える。

 

 

 

 

 

ルネサスは高知の工場も閉鎖となり、うちのお客さんも転職のため一家で県外へ引っ越した方もいる。

 

 

人生とは、平坦ではなく一直線でもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドキュメンタリーで取材を受けている方は、ほとんどが40代後半。

 

 

 

 

小学生の子供3人と新築一戸建てを抱えているAさん。

 

 

転職は容易いと思っていたが、自分のもつ技術はルネサスでしか使えないものだと退職後に知った。

 

 

 

 

どうせなら、好きな車の仕事がしたいと、トラックの運転手になったBさん。

 

 

みんな私と世代が近いので、自分に置き換えて観てしまう。

 

 

 

 

 

 

お好み焼き屋を夫婦で始めたCさん。

 

 

そこには、ルネサスの元同僚たちが賑やかに集っていた。

 

 

 

 

 

 

その中にDさんがいた。

 

 

Dさんはリストラされた700人のなかで、いち早く次の就職をきめた。

 

 

Dさん『お金でいうと失業給付をもららった方が(今の給料より)いいわけですやね。』

 

 

『でも、ゆっくりする気がなかったんです。』

 

 

『ゆっくりしたら、僕はダメになるんです。』

 

 

 

 

 

Dさんはすぐに就職活動をして、最初に内定をくれたところに飛び込んだ。

 

 

実はDさんは、ルネサスではかなりの出世頭だった。。

 

 

180人の部下をもつ管理部門のリーダーだった。

 

 

そんなDさんが突然解雇され、病院や介護施設のシーツをクリーニングをする仕事についた。

 

 

 

 

 

 

 

職種や給料ではなく、とにかく働きたかったというDさん。

 

 

50を目前に、すべてを失った喪失感を埋めるために彼は働いた。

 

 

 

 

年収は数分の1になっただろう。

 

 

もはや出世に興味もない。

 

 

 

 

運命を恨んではないだろうか?

 

 

人間って充電したり、リセットする期間があってもいいんじゃないか?

 

 

 

 

 

でもDさんは早く働かきたかったと言う。

 

 

 

Dさん曰く

 

 

『肉体的につらいところはありますが、これが今、僕にとっては新鮮なんです。』

 

 

彼の言葉は何回聞いてもズシンと響く。

 

 

 

 

 

仕事とはなんだろうといつも考える。

 

 

 

 

仕事って、順調なときはロマンなのかもしれない。

 

 

夢だったり、自己実現の場であったり。

 

 

 

 

 

仕事って、不満やガマンが強いと生活の手段となる。

 

 

お金のために、家族のためにって。

 

 

 

 

 

Dさんはルネサス時代、仕事にロマンや自己実現を感じていたと思う。

 

 

それが突然消えてなくなっても、彼は腐らなかった。

 

 

Dさんにとって仕事とは、自分の生き様なんだろう。

 

 

 

 

 

自分の仕事がもし頓挫したとき、私はDさんのようで在りたい。