小6長女の入試当日。
私はソワソワしていた。
『早くご飯食べなさい。』
『早く着替えて。』
『志願書持った?』
『鉛筆と消しゴムと、コンパス・定規』
『あと上履き・・・』
長女『おとーさん、さっき確認したやん。大丈夫でっ』
うーむ。
私が一番取り乱しているようだ。
長女がいない時に、嫁さんにソッと小声で言われた。
嫁さん『あんまりソワソワしてたら伝染するからね。落ち着いてね。』
長女はナーバスになることもなく、お腹や頭が痛いとも言わず、いつも通りだった。
私よりどっしり構えている。
道中、車の中でヨメさんが長女に面接の稽古をつけていた。
『この学校を志望した理由は?』
『尊敬する人は?』
『あなたの長所と短所は?』
長女が次々と答えていく。
だが答えの内容より、答えている時に手と肩がグラグラ、頭がフラフラ揺れているのが問題だった。
学校に到着。
まだまだ時間に余裕があったので、頭と手を固定して話す練習をした。
その後、長女は自分のルーティーンを行った。
宮沢賢治の『雨にも負けず』を早口で音読した。
これが脳のウォーミングアップになるのだとか。
5~6回『雨にも負けず』を音読していた。
校門前まで5分ほど一緒に歩いた。
長女が入試会場の玄関に入っていき、姿が見えなくなった。
もう我々夫婦の手から完全に離れた。
もう私たちがしてやれる事はない。
あとは一人で長女が頑張るしかない。
私がしてあげられたことは、寝坊をせず、道を間違えずに、時間通りに入試会場へ長女を届けたことだけだった。
親がしてやれる事って、本当に少ない。
次の日。
合否の結果をネットで見て、長女に電話で伝えた。
長女が電話の向こうで飛び上がっていた。
電話だったけど、飛び上がって喜んでいる映像がハッキリ見えたんだ。