親子の交差点

あるの朝。

 

 

自転車で私が出勤していると、中1になったばかりの長女が自転車に乗って信号待ちをしていた。

 

 

 

 

 

 

周りには赤信号で待っている自転車が10台くらい。

 

 

 

まだ家の近所だったから、この自転車のなかに長女の同級生がいるかもしれない。

 

 

中学にもなると、道端で父親に声をかえられたくないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

私は長女のすぐ後ろにいたけど、声をかけなかった。

 

 

長女はうしろにいる父に、気付いているだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

さっき、朝の準備を手間取っている長女を叱った。

 

 

だから怒っているかも。

 

 

思春期だから声をかけてほしくないかも。

 

 

単純に気づいてないかも。

 

 

 

いや、気づいているだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

うーむ。

 

 

まぁいいや。

 

 

あれこれ考えるのはよそう。

 

 

私は正面の赤信号を避け、左手の交差点を渡った。

 

 

 

 

 

 

私は長女の横を通り過ぎた。

 

 

長女も私に声をかけてこなかった。

 

 

 

 

 

 

 

私が交差点を渡ってすぐ、長女の信号も青に変わった。

 

 

私と長女は道路を隔てて、並走する形になった。

 

 

私は道路の東側。

 

 

長女は道路の西側。

 

 

 

 

 

二人とも同じ方向に向かっている。

 

 

でも、この道幅と同じだけ、親子の距離感があるようにも感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この距離で声をかけようとしたら、大きな声をださねばなるまい。

 

 

道端で大声で父親に名前を呼ばれる。

 

 

これはJC(女子中学生)が嫌がる2024年度ランキング1位にはいる。

 

 

※当社調べ

 

 

 

 

 

 

 

もうすぐ分かれ道。

 

 

父と娘の自転車は別々の地に向かう。

 

 

 

 

 

こうやって長女は大人になっていくんだな。

 

 

こうやって父娘の距離はひらいていくんだな。

 

 

と思っていたら

 

 

 

『おとーさん(  *ˊᵕˋ  )

 

 

 

と言って長女が手を振ってきた。

 

 

 

 

 

 

なんだ。

 

 

先ほどは気づいてなかっただけなのか。

 

 

いろいろ思案したのは私の杞憂であった。

 

 

 

 

 

 

まだまだ私の娘だった。

 

 

 

 

 

なんだか。

 

 

中学のとき、初恋の子に声をかけられたように嬉しかった。

 

 

(*´`*)ウフフ