ある日、姉妹と海へ行った。
いつも通り、姉妹で
『どちらが綺麗な貝を見つけるか選手権』
が始まった。
私はきれいな貝殻を見つけ、次女に渡した。
中には生きたヤドカリが入っていて、次女は驚いて貝殻を落とした。
次女は恐る恐るヤドカリを拾って、観察していた。
そのうち次女は、そのヤドカリをたいそう気に入った。
姉妹2人で、血まなこで次のヤドカリを探した。
ついに長女がヤドカリを見つけて、次女に渡してあげた。
さて、楽しい時間は早く過ぎるものです。
お開きの時間。
やはり小4の次女は、
『ヤドカリを持って帰りたいと。』
言い出した。
なかなか粘って帰ろうとしない。
仕方なく、空のペットボトルに海水と砂利とヤドカリ君2匹を入れて帰宅。
車のなかで、4年生の次女はまるで宝箱を見るように、曇りなき瞳(まなこ)でペットボトルを見つめていた。
貝から『ピョコッ』と顔をだしては、カサカサお家ごと移動するヤドカリ。
なんだか愛嬌のあるやつだ。
家に帰ると、やはり次女はヤドカリを飼いたいと言い出した・・・
ペットボトルでは小さ過ぎるので、100均で蓋付きのケースと砂利を買った。
海水が少ないので、海水の塩分濃度を調べて塩水で作った。
水道水を煮沸して、塩をいれて、冷やした。
塩水で、海水もどきを1リットルを作った。
不安だったから、本物の海水に少しだけ塩水をいれて様子を見た。
うーむ。
ヤドカリが、みるみる元気をなくしていった。
次女が容器をジーッと見つめている。
『おとーさん、でっちゃんもチビちゃんも元気ないねぇ。』
デカい方がでっちゃん。
お気に入りの小さい方が、チビちゃんだ。
次女が命名した。
父『夜やき寝ゆうがやない?』
父『我々も今日はもう寝ようか。』
ヤドカリが夜行性というのは、周知の事実。
だが、そのときは
『夜だから寝ている』
と次女をさとすのが、父には精一杯であった。
次の日。
やはりヤドカリは動かない。
ヤドカリは寿命が15年もあるらしい。
昨日たまたま2匹とも、15歳の誕生日だったのだ。
他に天に召された原因が思いつかない。
決して決して塩水のせいではない。
次女が『ジーッ』と容器のヤドカリを見て動かない。
『動かんねぇ。』
と肩を落とす次女。
次女には、こんど川へヤドカリを探しに行こうと伝えた。
海水の生物を飼うには、相当の装備が必要だ。
あまり川ではお見掛けしないヤドカリだが、これは気合で探すしかない。
あわよくば、カニくらいでガマンしてくれるかもしれない。