2024年
11月
16日
土
めおと漫才
叔父の葬式のため、おとん、おかん、姉、私の4人は早朝から大阪に向かった。
77歳のおとんと74歳のおかん。
すっかりお年を召してしまった。
行きも帰りも高知ー大阪間を日帰りで私が運転する。
ハードな一日となった。
しかし、ハードなのは運転だけではない。
両親と往復約10時間も密室で一緒にいるというのが、私に耐えられるかどうかだ。
食品衛生で3秒ルールというものがある。
食べ物を落として3秒以内に拾えばセーフというやつだ。
これにならって、私も1分ルールを設けている。
親と電話で話すのは1分以内だ。
理性が保てるのは2分が限界だ。
同じ話を何度も聞いてくるおとんと、
同じ話を何度もしてくるおかん。
最恐コンビである。
さて、2分で神経を消耗するのに、往復10時間も一緒に居て絶命しないだろうか。
実家の神田まで迎えに行って出発しても、大阪どころか(私の計算では)薊野あたりで車が爆発するのではないか。
そんな不安もあるなか、4人での大阪旅がスタートした。
そうは言っても、姉がいてくれて助かった。
うまく車内を和ませてくれた。
私が運転して、助手席に姉がいる。
後ろの席におとんとおかん。
後ろの席でいつものように、めおと漫才が始まる。
49日の日取りをみんなで話し合っている時、おかんだけ全く別の話題をず~~~ッと一人でしている。
おかんのボケに対して、おとんが突っ込む。
『いまは49日の話をしゆーろ。(怒)』
こうやって、いつもおとんとおかんは言い合いになる。
おかんの周りだけ地球の磁場が歪んでいて、おかんだけ時空を超えて生きているのか。
それくらい、おかんだけズレている。
そう思っていたら、 次はおとんがボケて、おかんが突っ込む。
本当にめおと漫才のようだ。
二人のつたない話術と、つたない読解力で話は頓挫して、すぐ言い合いになる。
最近流行のダブルボケ、ダブル突っ込みである。
二人とも全く話が嚙み合っていない、高度なズレ漫才まで披露してくれる。
舞台の漫才に対して、観客席から笑ったり野次を飛ばす私と姉。
2分だとイライラするけど、数時間一緒にいると慣れてくるから人間の適応力は素晴らしい。
『時短のため、おのおので朝食を用意して車内で食べるように。』
という通達を大阪行きの前日に、私が送っていた。
車内で私と姉がパンを食べ終わった頃、おとんがおにぎりを8個も持ってきていることが判明した。
おにぎり8個て。
力士かレスラーかよ。
おのおので用意と言ったのに。
一人2個ずつ分も買ってきている。
なぜだ。
おとんに聞いてみた。
『足りざったらこまるろ。』
というのが父の言い分だ。
コンビニでトイレ休憩したとき、なぜかおとんがパンをさらに2個買ってきた。
さすがに突っ込んだ。
私『おとん、おにぎりがまだ6個も残ってるやん。』
私『なんでパン2個も買ってきたん?』
おとん『このメロンパン、ふちっこがボロボロしてうまいがやき。』
おとん『あきらこれ食べや♥』
とニコニコしてメロンパンを渡してきた。
我が国の開国以来、高速道路を運転しながら、ボロボロ落ちるメロンパンを喰らう日本男児がいただろうか。
『それボロボロ落ちるやん(笑)』
と姉が優しく突っ込んでいた。
姉は優しいなと思う。
私も姉に習って、なるべく親を叱らないようにした。
私『おとん、メロンパンはあとで食べるわ。』
とだけ言っておいた。
おとんが食糧を買いすぎているのを、おかんブツクサ言い出して、またおとんとおかんが言い合いになりそうだった。
こうやって、うちの両親はケンカをしているんじゃなくて、じゃれ合っているのだ。
数時間一緒にいたらそう思えるようになってきた。
そんなこんなで、大阪まで行って帰ってきた。
あんな元気で破天荒だった伯父が逝ってしまった。
この4人で、こんなに長時間過ごすのも、もう最後かもしれないと思った。
いつか、この両親のめおと漫才が見られなくなると思うと、無性に寂しい。